FPオフィス ワーク・ワークス ファイナンシャルプランナー(CFP)の中村宏です。
1月の住宅ローンの金利は、固定金利タイプの金利が軒並みアップしました。
一方、変動金利タイプは、先月と変わりませんでした。
なぜ、このようなことが起こったか?
住宅ローンの変動金利は、日本銀行が決める政策金利の影響を受けて決まります。ご存知の通り、日本銀行はかねてからの金利緩和政策により、超低金利としており、現在の政策金利は▲0.1%(ゼロと思ってください)。
日本でも昨年から物価が上がっていますが、日本銀行は「この物価上昇は短期的なもの。賃金が上がっていないので、やがて物価上昇率は落ち着いてくるはず。利上げをするつもりは毛頭ない」と言っています。
住宅ローンの変動金利は、日本銀行が政策金利を変えない限り、基本的には変わりません。もちろん、各銀行は、政策金利を参考にして、自行の金利を決めていますので、銀行の営業的な施策等で変更することはあります。
例を挙げましょう。
三菱UFJ銀行の2023年1月の住宅ローンの変動金利は、0.475%です。
とても低いです。
この水準は、政策金利が▲0.1%(ゼロ)のときに設定されているものです。
さて、話は少し変わりますが、変動金利で住宅ローンを返済している方から、ご相談をいただくことがあります。
「金利は急激には上がりませんよね?」
ちなみに、アメリカの政策金利は、昨年3月に、それまでの0.25%から0.5%になりました。そして11月には4.0%になりました。なんと9ヶ月で3.75%も上昇したのです。
もし、日本の物価上昇がアメリカ並みになって、インフレを抑えるために日本銀行が利上げをして、政策金利を9ヶ月で3.75%上昇させたら?
単純に考えれば、三菱UFJ銀行の0.475%の変動金利は、9ヶ月後(実際には半年ごとに見直されます)には、4.225%(=0.475+3.75)になります。
さてさて、話は長くなりますが、固定金利タイプの金利が今月アップしたのはなぜでしょう?
住宅ローンの固定金利は、長期金利(10年満期の国債の利回り)によって決まります。
そして、長期金利は、市場で決まります。つまり、需要と供給の関係、取引の結果決まるのです。
かねてより日本銀行は、金融緩和政策のもとで長期金利も低金利にするため、市場にみずから参加して、10年満期の国債の利回りを▲0.25%~+0.25%の範囲内になるように誘導していました。
ところが、昨年秋から上限の+0.25%に張り付くことが多くなりました。アメリカ等の長期金利の上昇の影響を受けて、日本の長期金利にも上昇圧力がかかっていたのです。
その圧力(市場の力)に抗し切れず、昨年12月に、日本銀行は、突然、誘導金利の誘導幅を▲0.5%~+0.5%に拡大しました。
するとたちまち、長期金利は+0.5%近くに上昇しました。
1月の住宅ローンの固定金利は、12月中下旬の長期金利の情勢を見て各銀行が決めます。
その結果、今月の固定金利タイプの金利が一気に上昇したのでした。
さてさてさて、、、、以上のことから何がわかるでしょうか?
固定金利は、変動金利よりも先に動くということです。
日本銀行が政策で決めるより前に、市場は将来を先取りして思惑で動きます。
日本銀行が市場に参加して思うようにしようとしても、市場の力のほうが強いのです。
さてさてさてさて、、、変動金利で住宅ローンを返済している方から、次のようなことを言われることがあります。
「金利が上昇しそうなら、固定金利に変更しようと思ってます!」
「できへん!ちゅうねん!」
変更する固定金利は、すでにもっと高い水準になっているです。そんな高いところに簡単に切り替えられますか?
「しばらく様子を見ていれば、市場で決まる固定金利は下がってくるかもしれない。そのときに変更しよう」という根拠ない期待も膨らみます。
ずるずるずる~~~~。そうこうしている間に、変動金利は上昇しはじめるかもしれません。
変動金利を固定金利に変更するタイミングは、株式の買い時、売り時を見定めるのと同じ難しさがあります。
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