これからは、年110万円以内の暦年贈与による相続税対策の効果が弱まる!

FPオフィス ワーク・ワークス ファイナンシャルプランナー(CFP)の中村宏です。

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

今年こそ、コロナを気にすることなく、自由に動き回れる年になることを祈ります。

さて、お金持ちが年齢を重ねると、いろいろなことに考えを巡らせる必要があります。

そのひとつが、相続税の節税対策。
自分が死亡したあと、財産を受け継ぐ遺族が、できるだけ相続税を払わずにすむように、生前の自分に何ができるか?を考え、実行する必要があるのです。

遺族というのは、親や祖父母などから、何の苦労もなく棚ぼたで財産をもらうのに、うまくすれば払わなくてもよかった税金を払わなければならないとなると、生前に策を講じなかった故人に対して、「もっとうまくやってくれていたらよかったのに」という気持ちを抱きがちです。

なお、相続税節税対策は、一度検討、実行して終わり、ではありません。

時代とともに、制度に変更がかかるからです。
変わる理由は、使い勝手をよくするため、経済対策として消費を促すため、過度な相続税対策を防ぐためなど、さまざまあります。

制度変更があると、過去に実施した相続税節税対策が、効果的でなくなる場合があります。そのため、不断の見直し、更新が欠かせないのです。

今回ご紹介するのは、暦年贈与。「毎年1月1日から12月31日までの1年間に行った110万円までの贈与には贈与税がかからない」という仕組みです。贈与した、しない、にかかわらず、よく耳にするお馴染みのものです。

暦年贈与は、時間がかかるものの、効果的な相続税節税対策です。

相続税というのは、死亡時の故人の財産にかかるものであり、財産が多いほど税率が高く、払う税金が多くなります。
逆にいうと、死亡するまでに、できるだけ財産(評価額)を少なくしておくことが、有効な相続税節税対策なのです。

暦年贈与は、生前に家族等に財産を贈与することによって、死亡時の自分の財産を少なくするとっておきの方法です。

たとえば、暦年贈与の仕組みを使って、5人の子供に年間100万円贈与すると、自分の財産は、年間500万円少なくなります。
子供は、非課税枠の年110万円以内の贈与なので、贈与税を払う必要がありません。これを10年続けると、死亡時には5,000万円の財産が減ります。

しかし、この暦年贈与は、何らかの病気等で自分の余命がわかってから等、慌てて大急ぎで相続税節税対策をしようと思っても、できないようになっています。

現在の仕組みでは、死亡する3年前までに相続人に対して行った暦年贈与は、故人の相続財産に加えて相続税の計算をすることになっているからです。
したがって、先の例では、死亡するまでに通算5,000万円の暦年贈与をしても、最後の3年分(1,500万円)は、死亡時の財産に加えるので、死亡までに減らせる財産は、実質3,500万円となるわけです。

以上が、現在の制度の内容です。

これが、2024年の暦年贈与から、変更されます。
相続財産に加算する暦年贈与が、現在の死亡前3年間から7年間に延長されるのです。

なお、延長は段階的に行われます。

2026年までに死亡した場合は、これまで通り過去3年分。

2027年から2030年の死亡は、過去3年超から7年未満。
つまり、2024年1月1日以降の贈与が延長の対象になるのです。

2031年以降に死亡した場合は、過去7年分の贈与が、相続財産に加算されて相続税の計算がされます。

この制度変更によって、死亡するかなり前から計画的に贈与をしないと、上手な相続税節税対策にはならないことになります。

たとえば、80歳の男性の平均余命は、8.57年です。
つまり、80歳の男性は、平均して88.57歳まで生きるということ。

余命がこの通りだとすると、80歳から9年間、暦年贈与を使って相続税節税対策をしたつもりでも、最初の約2年分くらいしか節税効果が期待できないということになりますね。

この制度変更の国の意図は、「お年寄りは、もっと若いうちから、子供や孫に財産を与えよう。そうすれば、子供や孫がもらったお金を使って消費をし、その結果、経済が活性化するので」ということでしょう。

なお、この制度変更について、死亡前の3年超7年(合計4年間)の贈与について、4年間の合計100万円までは、相続財産に加算されません。

また、相続しない孫など(相続人でない人)への暦年贈与は、これまでも、そしてこれからも、死亡前の贈与を相続財産に加えて相続税の計算をすることはありません。

1世代スキップして、孫に暦年贈与をすると、従来同様、有効な相続税節税対策になります。

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