FPオフィス ワーク・ワークス ファイナンシャルプランナー(CFP)の中村宏です。
退職金というものは、給与などと違って、税金が大幅に優遇されることをご存知ですか?
退職金にかかる税金は、以下の方法で計算します。
退職所得=(支給額-退職所得控除額)÷2
所得税額=退職所得×所得税率
住民税額=退職所得×住民税率
上記の「所得税額」+「住民税額」が、退職金にかかる税金の合計額です。
退職金の税制優遇のポイントは、2つあります。
まず、退職所得控除額。
支給額から差し引くことができる金額(所得とみなさない金額)のことです。
退職所得控除額は、その会社の勤続年数によって決まります。
勤続20年までは、1年につき40万円。21年目からは1年につき70万円です。
(なお、勤続年数の端数は切り上げます)
勤続20年の人なら、800万円。
勤続30年の人なら、1,500万円。
勤続40年の人なら、2,200万円。
勤続45年の人なら、2,550万円。
退職金の支給額がこの金額以内なら、退職所得=0円となり、所得税も住民税もかからないことになりますね。
退職所得控除額は、勤続年数が長い人ほど金額が大きくなります。
将来的には、定年年齢を65歳までに延長する会社が増える見込みです。そうなると、退職金額の多い会社の場合、税金の優遇が大きくなるというワケ。
ただ、もはや、大企業でも終身雇用を保証できないともいわれています。
終身雇用(長期雇用)を税金面で促進するような優遇制度を、これからの時代も維持していくのはいかがなものか、とも思います。
ポイントの2つ目は、退職所得を求める計算式の「÷2」。
なんといっても、この優遇効果が大きいのです。
退職所得の計算において、(支給額-退職所得控除額)>0となった場合、その金額を2分の1にできるのです。
たとえば、勤続年数20年(退職所得控除額:800万円)の人が、2,000万円の退職金を支給されたとします。
退職所得=(2,000万円-800万円)÷2=1,200万円÷2=600万円。
600万円にかかる所得税額と住民税額は次の通りになります。
所得税額=600万円×20%-42.75万円=77.25万円
住民税額=600万円×10%=60万円
税額合計=77.25万円+60万円=137.25万円
結局、この方は、支給額2,000万円から税金137.25万円を差し引いた1,862.75万円が手取りになります。
もし、退職所得の計算に「÷2」がなかった場合、所得税額と住民税額はどうなるでしょう?
退職所得は600万円ではなく、1,200万円になりますから、
所得税額=1,200万円×33%-153.6万円=242.4万円
住民税額=1,200万円×10%=120万円
税額合計=77.25万円+60万円=362.4万円
この場合、この人の手取り額は、2,000万円ー362.4万円=1,637.6万円です。
「÷2」がある場合のほうが、225万円のほうが手取りが増えるのです。
これが超優遇の仕組。
この「÷2」マジックを使えば、うまくすると、ひと財産築くことも可能です。
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