外貨建ての生命保険を契約することへの懸念

FPオフィス ワーク・ワークス ファイナンシャルプランナー(CFP)の中村宏です。

近年、「外貨建ての生命保険」に加入している方を見かける例が増えてきました。加入の目的は「貯蓄」です。

「貯蓄」目的で活用される保険は、「外貨建て生命保険」の前には「低解約返戻金型の終身保険」でした。
もっともっと前、1990年代の半ばくらいまでは、「養老保険」や「終身保険」でした。

1980年代から1990年代の当初までは、日本の金利が高く、郵便局で10年満期の養老保険に加入すると、満期時には、支払った保険料総額の2倍の満期保険金を受け取ることができました。もちろん、預金でもそれはできたのですが、郵便局が販売する一時払養老保険が人気を博しました。

養老保険や預金でお金を増やすことは、投資信託や株式など元本保証のない資産運用よりも安全・安心で、しかも十分満足できるリターンが約束されていました。

そのうち、日本の金利が低くなると「低解約返戻金型終身保険」が勧められるようになりました。この商品は、保険料を払っている最中に解約すると大きく元本割れをするのですが、保険料を払い終えたあとに解約すると支払保険料総額よりも多い解約返戻金を受け取れるものでした。

その後、さらに日本の金利が低くなると、日本よりも金利が高い「外貨建ての生命保険」が勧められるようになりました。
そして現在に至ります。

生命保険を「貯蓄」や「資産運用」として使う際の問題点は、解約返戻金が支払保険料総額を上回るまでの期間が長期に及ぶことです。いつまでたっても解約すると元本割れをしてしまうことです。

たとえば、独身30歳で、外貨建ての生命保険に入り、保険料払込期間が60歳まで、毎月の保険料が2万円から3万円程度だとしましょう。

この方の場合、独身の間は毎月保険料を苦もなく払えるでしょう。
しかし、将来、結婚して子供が生まれたり、子供が増えたり、住宅を購入して住宅ローンを払うことになって支出が増えたらどうなるでしょう。
保険料を払い続けることが大きな負担になりませんか?
しかし、途中で解約すると元本割れになります。
円高になれば、元本割れの損失はさらに大きくなります。
つまり、ライフステージの変化に伴って、家計が窮屈になっても、保険の場合、見直しがしづらいのです。

「外貨建て生命保険」を例にとりましたが、その他の保険も含め、低金利の現在、貯蓄や資産運用を目的に生命保険を使うのは、いかがなものかと思います。

保険は、暮らしのリスクに備える目的で、「掛け捨て」のものを契約するのがシンプルです。

そして、貯蓄は銀行の預金、資産運用は証券会社の投資信託を使うのがわかりやすいやり方です。

 

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